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10月31日
あずさ53号 新宿AM9:00発
少し余裕のある車内に、亀井俊介先生、青木外司さん、前澤ヨシコの三人。故、スズキシン一氏へのそれぞれの思いを胸に、甲府までの小さな旅だ。
お伺いしたくてならない私達の気持ちをお察ししてくださった奥様が、「紅葉も見頃です。お出かけ下さい。」と、お誘い下さったのだ。
甲府駅まで迎えにいらした奥様はお元気そうに見えた。良かったと思いながら私は彼女にしがみつくように抱きついた。奥様は私のオーバーアクションを優しく受け止める。外司さんも亀井先生も優しく見つめる。スズキ先生もそうだったっけ・・・・。
奥様の運転する車で、外司さんのカメラのシャッターの音が快調な、絶景「昇仙峡」の紅葉を堪能し、すぐ近くのご自宅へ。そこは、コスモス、ほうずき、まむしの頭(花の名)など庭一面に咲き乱れる、自然に抱かれた別天地だ。
ご自宅の中は、どこもかしこも、先生のマリリンの絵一色の世界。
まずは、40畳のアトリエの中に想い出の品と共に飾られたお写真にお線香をあげる。外司さんも、亀井先生も、涙をこらえておられたが私はだめだ。嗚咽を抑えきれない。優しくして頂いた、おバカな私を可愛がって下さった。やっと、「有り難うございました」と、云えたのだ。
いつものように、奥様のおもてなし料理は温かくて、おいしくて、いっぱいだ。奥様は気丈夫に、変わらぬ明るさで、山盛りの思い出をお話して下さった。亀井先生も外司さんも、思い出話は尽きる事が無い。長い時間がスズキさんで埋め尽くされた。
筆も絵の具も、すぐにでも描けるままだ。「その中から、ヨシコちゃん好きなだけ持っていって。」と云われる。「ただし、絶対に使ってね」とおっしゃる。スケッチブックもと、サラのものを何冊か持ってきて下さった。小さめのスケッチブックを選んで中を開けたら、描きかけのペン画1枚があった。たまらない・・・この線のつづきを引くはずの人が・・居ない。スケッチブックを抱きしめて、泣き始めた私の頭を、奥様は、ポン!とたたいて、「泣いちゃ ダメ!」と、おっしゃり、クルッと後ろを向かれた。
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